大胆な素材の使い方を発見する。

west2692008-09-16


今日の一枚は伊豆韮山にある江川家住宅土間の中央にあった独立柱。
主屋自体は室町時代後期と江戸時代初期に建てられた部分で出来ている。
従って、この風格のある柱も石も400年も前から黙ってこの家の重量を支えてきたことになる。


さて、建築に使われる素材は時代が下るごとに、薄く、小さく、軽くなる傾向がある。
石なら、城壁・石垣などに見られるように昔は「積む」のが普通だったはずだが、今では「積む」ことはほとんどなく、薄くスライスして張っているのが大部分だろう。
古い石積みの蔵はあるが、近代のビルはRCや鉄骨に石張りが主流だ。それでも初期のものは組積造であるように見せていたが、現代建築では張り物であることを隠さない。厚さ7ミリの大理石にもお目にかかったこともあるが、簡単に割れてしまうので取り扱いには注意が必要だった。石のくせに場合によってはガラスより脆いとはひどい話だと思った。
薄い石を作って貼り付けることは手間もかかるはずだか、不思議なことに、どんなに複雑なプロセスでも工業化・機械化しているので、結果的に値段は下がる。しかし、素材としてのありがたみがないので、簡単に壊される消耗品だ。長い目で見れば不経済的でもある。

石は厚いまま、重いまま使うほうが作り方もシンプルで寿命も長いはずだ。極端かもしれないがピラミッドが良い例だ。



写真は江川家住宅の西倉の庇に使われている屋根材。石を削って瓦の代わりに使っていた。
垂木も野地板もいらない。何年でも使えるだろう。昔の人は大胆だったなあ。こういう使い方を見ると「やられた」と思う。こんな風に、くよくよしない思い切った素材の使いかたを発見したいものです。