2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

アテはないけど

「曲ったことは大嫌い」という人は多いだろう。しかし人間社会の道徳やら建前と違い、自然に育った木は曲っているのが当たり前なので許して欲しい。 市場に出回る木材は真っ直ぐだ。これは真っ直ぐなるよう育てられ、製材されているからだが、この仕事につい…

最後のまつぼっくり

設計の最初の段階では敷地のどの位置に建物を配置するのか検討を行う。小龍庵の敷地は広いが斜面が多く平坦な部分は少ない。川沿いの林なので大きな木も生えている。 「この松とコナラを切らなきゃ、家が入りません」「大きい木なのにもったいないね」「じゃ…

地盤改良

昨日は小田原へと工事監理。土ばかり写っているが、これは基礎工事の根切りの状況。基礎工事の業者が2人で黙々と作業をしていた。敷地は根切りに先立ち表層改良という地盤改良を行なっている。 私たちが普段行なっている地盤改良は柱状改良という方法で、施…

脇役その2

くせの強い脇役が時に主役よりも目立つ時がある。鎌田行進曲は脇役を主役にしたそんな映画だった。あるお寺の庫裏を耐震補強した。耐震補強に際して土台・足固めや壁だけでなく、屋根も頑丈にしなければならない。伝統的な日本建築の屋根には小屋貫という材…

百万本のバラ

「窓から見える広場を真っ赤なバラで埋め尽くして」と、歌を聴きながらふと気になった。百万本のバラが埋め尽くす広場とはどのくらいの広さなんだろう。 で、計算してみました。百万の平方根は千。10cmにつき1本のバラとして、100m四方を埋め尽くすことが…

隣のディオゲネス

昔々ギリシャにディオゲネスという人がいて、日暮樽に寝そべって思索していたという。ある日、お偉方が彼の前に立ち「お前さん、何か希望があるか」と訊ねた。答えて曰く「あんた、俺の日陰になって邪魔だから、そこをどいてくれ」。さて、日本の小さな建物…

前引大鋸

福々亭には太い栗の木がもう一本あったのでマサカリ大工に依頼し、板に曳くことにした。こちらの道具は前引大鋸と呼ばれる文字通り大きなのこぎりを使った。昔の、確か葛飾北斎の絵に出てくる道具だが、現在生業として使っている人は滅多にいないといわれる…

脇役

長い歳月を生き延びてきたお年寄りの「おとぼけ」ように、古民家にだって「味のある」ところがある。 それは大きな梁や大黒柱などの表に出ている部分とは限らない。大抵「味のある」のは脇役だ。脇役は民家再生の際の強力な味方でもある。今日の一枚は養蚕農…

トイレはどうなんだ

「そして私は 見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を だれもきいていないと知りながら 語りつづけた……」(立原道造)立原道造は高校の国語の教科書で知った。年譜に建築家とあったが、繊細な詩を書く人の印象の方が強くて、どんな建築作品を残したのか…

こんな感じ

今日の一枚は土間材(シュタインアール)の作業風景。外国旅行などでにわか仕込みの言葉が通じない時は、いよいよとなったら身振り手振りがある。少々の誤解や紆余曲折があっても、概ね何とかなる。設計を業とする者にとって図面は建築の出来上がるべき姿を…

工期は10月いっぱいです。

今日の一枚は稲刈り風景。北巨摩郡小淵沢町の松向という所。山梨も随分建物が増えてきたけれど、まだまだこういった風景が残っている。 気持ちが行き詰まったときや、調子が悪い時は、高い所や広い所に出ると好いと言う。確かに、高い所や広々した風景は気持…

雨が漏っても大丈夫。

今日の一枚は栗の原木。樹齢は50〜60年。再生中の福々亭の庭で育った栗の木を、マサカリ大工に依頼して柱に製材した(9月8日・9日の日記参照)。マサカリ大工曰く「山育ちの栗は真っ直ぐに育つが、里の栗は曲がりくねって育つ。枝も多い」。だから、建築に使…

ビニール傘のコレクション

今日の一枚はフランク=ロイド=ライトの弟子である遠藤新が設計した旧近藤邸の玄関扉。 大きな一枚ガラスの開口部は現代的であり文句なくカッコイイ。外の景色が魅力的なら、誰がやっても間違いなく効果をあげる手法だ。 反面、こうして風景を分割して見せ…

大胆な素材の使い方を発見する。

今日の一枚は伊豆韮山にある江川家住宅土間の中央にあった独立柱。 主屋自体は室町時代後期と江戸時代初期に建てられた部分で出来ている。 従って、この風格のある柱も石も400年も前から黙ってこの家の重量を支えてきたことになる。 さて、建築に使われる…

生存最適空間

隣家の屋根の上では時折こうして、野良猫が寝ている。 『焼けたトタン屋根の上の猫(どんな話か知らないが、イライラを抑えているという意味らしい)』という戯曲の題名が思い浮かぶが、実際夏は暑くて居られないし、猫はそれほど我慢強くない。 だから、こ…

ツバメの巣

古民家の軒先や土間の天井にツバメの巣を時々見かける。我が家の前には水田があって、春先にはツバメがやってくるが、残念なことに大きな屋根がないので軒先に巣を作ったりはしない。 数年前、『木造家屋が減り高層ビルが増えた東京からツバメが姿を消した』…

へら、へら、へら。

今日の一枚は竹のヘラ。三つ並べて笑っているわけではない。切り倒したばかりの杉の木は皮が柔らかい。こいつをグッと刺して木の幹に沿ってぐるりと廻す。上下二箇所を輪切りにして、それぞれを一直線で結ぶと、クルリと皮がむける。 上の写真のように素人の…

まくりおとし

今日の一枚は「鳶口」。イカの口嘴ではありません。 群馬県勢多郡東村での森林体験に参加した際に見かけた。 山仕事の道具の一つで、倒した木材にこいつを引っ掛けて、向きを変えたり回転させたりする。熟練した職人が使うと丸太が軽やかに回転する。山仕事…

良寛床

今日の一枚は竹の子。東京は武蔵小金井の住宅街の小道に芽を出したもの。一つのモチーフを2回使う。簡単に言えば、二番煎じですが、どうやら定番化してきた感の有る今日この頃です。そんな訳でもう一つ良寛さんです。 「ある日、縁の下に竹が生えて来た。早…

良寛さんの蒲団

数年前、良寛さんのファンというN氏に誘われて新潟県の出雲崎というところに行った。 出雲崎の町は日本海に面している。そして、山と海の間の平地に、間口の狭く奥行きの長い家が沖に向かって一斉に漕ぎ出した船のように建ち並んでいる。 N氏に進められて防…

マサカリ大工その2

マサカリ大工の手業をもう一つ。 現在のような製材機械がない時代に原始的な道具を使ってどのように木を加工していたのか。昨日の大工が子供たちを相手に行なった実演を紹介します。 右上の写真は木で作ったクサビ。素材はクヌギとかナラなどの広葉樹や杉な…

マサカリ大工

今日の一枚の写真は現在工事中のパッシブソーラーハウス。構造用合板とアルミサッシを取り付けて、防湿シートで覆った段階です。正面のコーナーにある開口部から陽射しを取り入れて床に蓄熱する。外観はシンプルな箱だけど内部は吹き抜けを介して光と風と視…

スルメの腕組

昨日は小田原で地鎮祭。 南に海と小田原城を望む景色の良い高台の敷地に立地と日照条件を生かしたダイレクトゲインのパッシブソーラーハウスを計画した。設計・見積もり・費用調整・建築確認とハードルを越えて、来年2月の完成を目指していよいよ工事がスタ…

西藤木の水車

甲州市塩山西藤木にある放光寺前の水車。 これは江戸時代末期の創建で、当時は「連」と呼ばれる村落の組織で共同体管理していた。 水量が多く、馬力があるので、現在でも挽き臼と付き臼を同時に使用できる。 復元物や観光用の新設水車ではなく、山梨県下に現…

狛犬ポーズのパンダ

八百万の神の国、日本には全国に数え切れないほどの神社があって、それぞれに狛犬君が住んでいる。右は現在工事中の住宅に行く途中にある両の木神社の境内を守る狛犬君。彼等にもいろいろ個性があって、こちらは強面ながらもおかっぱ頭にはそこはかとなく愛…

エコオフィス2

今日の1枚はお米。秋になりました。もうすぐ稲刈りですね。 話し変わって、先月の事務所の電気代が5万3千円。動力の基本料金の2万円を引いても、3万3千円。前の場所では夏のピーク時でも1万4千円(基本料金含む)程度の電気代で済んでいたので、貧乏…

バランス感覚

今日も宮沢賢治ネタをもう一つ。風邪で学校を休んだ時によく読んだのが「グスコーブドリの伝記」。主人公のグスコーブドリは冷害による飢饉を防ぐために、自らを犠牲にして火山噴火を起こし、発生する炭酸ガスで気温を上昇させ多くの人々を救う。 架空のお話…

銀河ステーション

9月になって、窓から見える空の雲が高くなってきた。秋の気配はするけれど、まだまだ暑い日が続いている。そんな訳で今日は冬の写真です。写っているものは「銀河鉄道の夜」の始発駅のモデルとなった釜石線(旧岩手軽便鉄道)の土沢駅。この雪の舞う駅が物語…

エコオフィス

民家再生を手掛ける設計事務所らしく、以前は古い木造の長屋を借り改装して使っていたが、手狭になり今年の7月に鉄筋コンクリートの3階建てに引っ越した(右写真)。 周りの建物が低いので風通しがよく、夏でも午前中や曇りの日はエアコン無しでも過ごせる…