脇役その2
くせの強い脇役が時に主役よりも目立つ時がある。鎌田行進曲は脇役を主役にしたそんな映画だった。
あるお寺の庫裏を耐震補強した。耐震補強に際して土台・足固めや壁だけでなく、屋根も頑丈にしなければならない。伝統的な日本建築の屋根には小屋貫という材料が大量に使われていたが、長い間に痩せて薄くなっていた。これでは構造的に効果を発揮しないということで新しい材料に取り替えることになった。
庫裏は築200年近いといわれ、安政の地震・関東大震災を生き延びている。この貫材だって大黒柱や大梁と共にこの建物を長いこと支えてきたわけだ。
枯れて、痩せてはいるが、腐ってはいない。お払い箱そして焼却処分というのは心苦しい、という訳で、住職が接客する部屋の天井板に使ってみてはいかがと提案すると、快く受け入れてくれた。
そんなわけで今日の一枚は脇役である貫材の大和板張り。
板の縁が曲っているので、並べると隙間が出来る。だからといって真っ直ぐに切り落とすのも悔しい。それで、互い違いに重ね合わせて張ることにした。「板の厚みもそれぞれ異なるから、当然天井面も微妙に凹凸が出来る。気にしないで、きっちり張ろうとは思わないでください」と工務店の担当者に伝えた。
黒い色は長い間に付着した煤。洗って塗装し、美しく仕上げる方法もあるが、この表情は年月が作り上げたものだ。縁の曲線が描く不規則な模様と同様、あるがままを受け入れ塗装せず使っている。
写真は昌福寺庫裏のハイサイドライトと天井の組み合わせ。