マサカリ大工

west2692008-09-08

今日の一枚の写真は現在工事中のパッシブソーラーハウス

構造用合板とアルミサッシを取り付けて、防湿シートで覆った段階です。正面のコーナーにある開口部から陽射しを取り入れて床に蓄熱する。外観はシンプルな箱だけど内部は吹き抜けを介して光と風と視線が交差する立体的な空間構成になっている。

上の写真はこの家の吹き抜けに使われている栗の柱。知り合いの大工がマサカリを使って栗の木から削り出した貴重品を、一本分けてもらった。彼の道具の主力は電動工具ではなく、マサカリ・ナタ・チョウナ・オガなどの古典的な道具だ。中には古墳時代の鉄斧やら木製のクサビなども混じる。そうした道具を駆使して、自宅の近在の山から切り出した木を削り出し、柱や梁・板などを作る。製材時に発生した端材もとことん利用して建築を造っている。
マサカリというのは足柄山の金太郎君の担いでいる奴で、木を切り倒し、枝を払うための単純な道具だと思っていたが、腕と感性のある大工が使えば、このように野趣味だが味わいのある表情を作り出すことが出来る。金太郎も熊相撲の力士ではなく、本当は腕のいい大工だったのかも知れない。

さて、当然のことながら自然界では真っ直ぐに育つ木は稀で、曲って伸びるのが普通だ。曲った丸太から真っ直ぐな木材を製材するために、機械を使って元口と末口を一直線に結んで切り落とす。曲がりが大きいと直径30センチの丸太でも12センチくらいの角材になってしまう。残念ながら残った端材は産業廃棄物として捨てられるという。

この柱の緩やかな曲りは枝葉を茂らせていたときの姿を残しているが、古典的な道具による手作業だったから、木の曲りに沿って製材し、元口から末口まで断面を有効利用することが可能だった。機械で直線製材したら、柱として使える太さが確保できただろうか。
こうした自然な形の木材を生かして使うのなら、融通無碍な人の手仕事に勝るものはない。