まくりおとし

west2692008-09-12

今日の一枚は「鳶口」。イカの口嘴ではありません。
群馬県勢多郡東村での森林体験に参加した際に見かけた。
山仕事の道具の一つで、倒した木材にこいつを引っ掛けて、向きを変えたり回転させたりする。熟練した職人が使うと丸太が軽やかに回転する。

山仕事の一つに「まくり落とし」というのがある。間伐作業の一つで、不要になった樹木を切り倒し、概ね2メートルくらいの長さに切断(玉切)した後、運び出す方法のことだが、どのようにするかというと、切った木を「ヨイショ」と斜面に立てる。立てた木を斜面に沿って倒す。倒れた木の斜面下側を元にしてまた「ヨイショ」と立てる。また倒す。これを繰り返して斜面の一番下まで木材を運び出す。
間伐材の長さが何故2メートルなのか昔から不思議だった。どんな貴重な材種も間伐材はこの長さだ。「もっと長ければ色々と使えるのに、もったいない」と思っていたが、体験して納得した。これ以上長いと、「まくり落とし」が出来ない。山の斜面は急すぎて人間しか入れない。機械を使わず、人間の体格と腕力だけで運び出すのにはこの方法が一番簡単だった。

下の写真は山仕事の人が休憩するための山小屋。まくり落とした間伐材を製材して外壁に使っている。木の曲り部分も板の端に残っているので、一枚一枚に変化があって面白い。しかし、端材として捨てられるような板ばかりだから市場には出回らない。一度使ってみたいが、当然ながらなかなかチャンスがない。

同じ自然素材であっても、製材された板材のようにカタログを見て電話一本で手に入るような材料じゃないので、それなりの覚悟も必要だが、出来上がりの効果は抜群だと思う。
どなたかいかがですか?