屋根を守る大引き

west2692008-10-08

今日の一枚は「千木」。神社の屋根に乗っかっているバッテン模様の木材だが、山梨県北巨摩郡(現北杜市)で見かける茅葺民家の屋根を押さえる棟飾りにもこうした千木が使われている。工業製品が主流の現代建築では見かけることは少ないが、伝統的な茅葺屋根の処理方法としてはイワヒバを載せたり、杉皮で葺いたり、竹でくるんだりなど、それぞれの地域特有な方法が採用されていた。
ちなみに、建築設計事務所を開いて最初に手掛けた再生民家の屋根にはイワヒバが使われていたが、なぜか赤い花が屋根の上に咲いていた。相棒の目撃ではウチワサボテンも混ざっていたらしい。サボテンの花だったのかも知れない。

「杣口の家」北巨摩郡白州町にあった民家を東山梨郡(現山梨市)牧丘町に移築した再生民家。建物の出身地を暗示すべく、屋根には千木を載せたいと考えた。千木を押さえる棟木には解体時に民家の床から出てきた栗材の大引きを転用している。

建物の床下に使われていた部材の多くは腐朽していたが、さすがに栗は水に強くほとんど無傷で残っていた。
今までは縁の下の力持ちだったが、今度は最も高い所で屋根を守ってもらうことになった。

全部は難しくても、屋根の一部には民家らしく自然素材を使いたい。「自然素材だって、かなり耐久性はある」といっても、やはり何らかの対策は必要だ。千木は桧材で作り、千木の部分の屋根は厚い焼杉板の板葺き仕上げにした。勿論、杉板の下はさらに防水してあるのでご心配なく。
尚、神社の場合、千木の上端部の処理に「水平に切る」方法と「垂直に切る」方法があって、どちらになるのかは祭っている神様によって決まっているのだそうな。こちらのお宅の場合は以前あった千木の形に倣って垂直に切っている。