狭き門

west2692008-10-13

「住宅内に茶道のお稽古が出来るスペースを」と依頼された。茶室にはいろいろなパターンがあって、広間・4畳半の外、三畳台目・二畳台目などの小間がある。こうした極小空間も居心地は良いが、部屋としてはやはり狭い。出入口にも茶道口・給仕口・にじり口等々あるが、日常生活の感覚ではこちらも随分狭い。

それでふと「狭き門」という言葉を思い出した。

本当はどんな意味だったのかなと、インターネットで「狭き門」と検索しました。『狭き門より入れ、滅にいたる門は大きく、その路は広く、ここから入る者は多い』(新約聖書のマタイ福音書)。

なるほど。パニックの際に出口に大勢で殺到するのは確かに危険だ。

ではどこまでなら狭いところから出入りが可能なのか。試してみた。障子をチョッピリ開けて、パジャマ姿で通り抜けられる最低寸法を測る。22.5?だった。

話し変わって、以前我が家の格子戸を設計する際に、母から注文があった。「狭き門」どころか猫が通り抜けることはまかりならない。

嫌がる猫の頭の幅を測ると6?だった。そこで格子の間隔を5cmにした。潜り抜けようとしたが諦めたのか、始めからその気がなかったのかは不明だが、彼女が格子の間から出入りすることはなかった。

さて、今日の一枚は再生民家「「杣口の家」」面格子です。

材料は再生前の建物が茅葺だった時代に屋根の下地として使われていた雑木を再使用した。

ちなみに茅葺の下地で茅を垂木に縛り付けるためにまとめて押さえる部材を「オショク」という。「オショク竹」と呼ぶこともあり一般的には竹を使うが、竹の無い山間地ではこのような雑木を使う。

再生時こうした雑木は利用する機会が少ないので大抵捨てられてしまう。しかし、このような格子として使えば、視線を柔らかく遮り、かつ繋ぐことが可能となる。

上の写真は長屋門に設けた面格子を内側から見ている。こちらからは隣家が見える位置だが、お互いを意識しないで、視線を強く拒絶しないような開口部が必要だと考えた。