もっと光を

west2692008-11-01

朝から設計のスタッフ達と民家の実測に出かけた。彼等が屋根裏を覗き、床下に潜り込んでいる間に、建築主と諸条件の打ち合わせをして、建物のあちらこちらを撮影する。
精密な図面を描くためにはすべての部屋をくまなく、舐めるように記録しなければならないが、つい無関係なものも撮ってしまう。という訳で「今日の一枚」は蔵戸の金物。もちろん今回の図面を描く役には立たない。
この家の蔵は主屋と廊下で繋がっていて家の中から直接蔵に出入りできるようになっていた。蔵の入り口は通常、漆喰仕上げの土戸・板戸・障子または網戸といった建具が2重、3重に組み合わされている。しかし、この蔵には土戸が無い。サッパリしたデザインの欅の板戸と障子を簡単に組み合わせている。

同じように脱線して、座敷ではこんなものを撮った。

床の間の横にある違い棚においてあった。何の箱なのか判らない。模様は螺鈿だろうか。

もしかすると理解がまったく違うかもしれないが、昔読んだ谷崎潤一郎の「陰影礼賛」には篝火に照らしだされる能面や、ほの暗い屋内でかすかに光る蒔絵などを例に引きながら、暗がりの中のほのかな輝きが日本的な美の感性なのだというようなことが書いてあった。

しかしこちらは視力が落ちてしまって暗い所では物が見え難い。暗がりの美学どころか「もっと光を!」といった状況ではある。昔の人は暗い所でも物が良く見えたんだろうか。
「今夜はブルーベリーのサプリメント(良視源)を飲もう」。うす暗い室内で箱の模様がほんのりと白く光るのを見てそんなことを思った。