土蔵の鉄格子

west2692008-11-15

今日の一枚は土蔵の鉄格子。
真面目な楽庵の話その3。
民家の再生を手掛け始めたころは、再利用するのは主に柱や梁だった。古い板類を使わない理由の一つは解体に手間がかかり、取り替えてしまう方が安いと考えていたからだが、上手く利用できれば古材独自の面白い表情を楽しむことが出来る。
武蔵小金井に移築する予定だった土蔵は傷みも少なく、基礎から屋根までそっくり再使用出来そうな顔をしていた。建築主の希望と同様に、古材は出来る限り使いたいと考えていたので古い板の扱いには悩んだ。屋根の板も使いたいとのこと。確かに見た目はなんとも無い。
雨漏りの後はほとんど無いが、以前同じような状況で垂木の上端がぼろぼろになっていたことがある。当然板も使えなかった。
床板も同様だ、古い板は硬くなっているので解体時に割れてしまいがちだ。
苦労して解体しても使えなければ無駄な労力を費やすことになるし、工事の最初から予定外の費用が発生することになる。そんな訳で設計の段階で古い板材を使うことは諦め、梁や柱などの構造材と蔵戸の再利用を計画の重点においた。
設計が終わり、業者も決まり、さあ解体という時になって、鉄格子も使いたいという話になった。
確かに錆びた風合いがなかなか美しい。板は残念だったが、古鉄の味わいというのもある。何処にどう使うといったアテは無いが、こういう話の展開は好きな方だ。鉄は腐るものじゃ無し、工事中に何か思いつくだろうと貰い受けることにした。
結局、1階と2階の南北の窓にそれぞれ4箇所あったが、新しい家の西側の面格子と吹き抜けの手摺子に再使用している。

建築主がワイヤーブラシで錆を落とし、蜜蝋ワックスを塗って仕上げたのが下の写真です。