リノリュウム

west2692008-11-17

今日の一枚は「リノリュウム」。6,7年前、保存修復工事の設計監理を行った時の旧田中銀行の床材に使われていた。塩ビ製の床材に似ているが、本来のリノリュウムは天然素材で出来ている。自慢じゃないが、その時まで本物のリノリュウムに接する機会はほとんど無かった。
始めて見た時は塩ビ製の床材だと思ったが、そうじゃない証拠にすり減ったり、ひび割れた所から麻(ジュート)と思われる繊維が顔を出していた。

文化財の修復工事では、当初から使用されている素材は出来る限り再使用する。そこで修復工事の際には保存状態の良好な所だけを集めてつぎはぎして使うことになる。5坪くらいのリノリュウムを集めて1坪くらいの床が出来た。出来上がってみると、きれいにまとまっている。それにしても模様をあわせるのは大変だったと思う。当初のデザインを考えた人は大理石のモザイク模様をイメージしたのかもしれないと思った。

完成後、建物は近所のボランティアが管理運営しているという。久しぶりに訪ねて床を撮影していると、その日担当のおばさんが修理の概要からリノリュウムの再利用方法についてまで丁寧に説明してくれた。何となくデジャブな時間だった。

下の写真は旧田中銀行のフェンス。

残念なことにオリジナルは戦争中に供出されて今は無い。これは完成時の記念写真を基に図面をおこしてアルミダイキャストで復元したもの。
フェンスの中に「田中」という文字を組み込んだデザインになっていた。