木目彩色

west2692008-11-24

明治時代の建築で擬洋風建築というのがある。山梨では藤村式とよばれているが、当時の職人達が欧米の石造建築のデザインを左官や大工技術を応用して実現している所がなかなか楽しい。

今日の一枚はそんな明治の職人の仕事です。これは「木目彩色」という。ペンキで木目を描いたもの。勝沼の旧田中銀行の社屋に残っている。石膏ボードに木目のプリントをした安易な天井材と違い、こちらはれっきとした木製の建具の上にわざわざ木目を描いている。ある人の説によれば、『当時の洋館建築では木部はとにかく塗装しなければならないとされていた。しかし、ペンキを塗れば木目が消える。それなら木目を描いてしまえと、開発した技術』なんだそうな。それなら塗らなきゃいいじゃないかと思う。変な話だが、昔はそういうものだったらしい。
さて、保存修復工事に際して、塗装屋さんにその方法を聞いてみました。
『自分もやったことは無いが、想像するに。先ずは白い色を塗って、その上に茶色を塗る。乾ききる前に櫛型で上の塗料を引っ掻いて木目を造るのだろう。昔の名人級の人が今でも残っていればやれるかもね』。
大工や左官などの伝統的な職種とは思えない塗装工事で、しかも明治30年代の技術を今でも伝える人が本当にいるんだろうかと心配になった。

昔の技術で同じような模様をどんなに上手に復元しても、オリジナルが消えてしまうなら保存することにはならない。
結局、創建当初の素材と模様を残すことを優先し、塗装の部分は剥げかかったままの状態で保存している。
建物は先ず大きなところに目が行くので、こうしたところにはなかなか気がつかない。でも時として、目立ない所に本物が残っている。「神は細部に宿る」ともいう。機会があったら是非見に行ってください。
下の写真はその旧田中銀行社屋。裏庭からの眺め。