正調甲州民家

west2692008-12-03

今日の一枚は「上条集落」。甲州市塩山にある甲州民家の多く残された集落。福蔵院というお寺の裏山から見下ろした所。

電話というやつは鳴るのも用件も、いつだって突然だが、今日もそうだった。電話の主は民家や文化財に詳しいI氏で「上条集落で改装中の福蔵院の庫裏をちょっと見て欲しい。今すぐ来れない?」とのことだった。着いて見ると、大工さんやら施主さんを始め関係者が大勢いて、ワイワイやっている。古い貴重な建物だという。このままリフォームしちゃって、後悔するようなことになってもいけないので、注意点を教えて欲しいとのことだった。

挨拶もそこそこにさっそく建物を見る。

「こんなところに大黒柱があったんだ」と、そこの建物で生まれ育った方が一人驚いている。室内から見えるところを削り取られて壁に塗りまれていた、大黒柱が突然出てきたのだ。栗材で1尺1寸×1尺5寸はある。上のほうはハマグリチョウナで仕上げてある。
この家には他の所にも太い柱があって、さっきまでそれを「大黒柱」と呼んでいた。不自然な位置にあったが、久しぶりに姿を現した元祖大黒柱が正しい位置なら、全体に構造の辻褄が合う。と、すればこいつは正調かつ古式な甲州民家だ。「もしかすると17世紀中期から後期かも」。
ちなみに山梨で残る最古の民家は17世紀初期といわれている。これが17世紀の創建だったら大変な発見だ、ということで大いに盛り上がった。

とはいえ、図面は出来ている。工事契約も済んでいる。解体は進んでいる。職人は来ている。作業は進めなきゃならない。時間は無い。

何が出来るかというと、今回の工事に影響が少なくて、将来文化財として修理する際に致命的にならないようなポイントを発見して注意を促すしかない。即興というか、出たとこ勝負というか、即断即決をしなければならない。こういうこともあるんだな。なかなか面白い一日だった。

さて、上条集落にはもう一つ貴重なものがある。下の写真は「微笑み仏」。
集落の真ん中にある小さなお堂にいて、こうして人々に笑顔を提供している。彫ったのは木喰白道。江戸時代を生きた人。