長寿命建築の手法

west2692008-12-04

南アルプス市で「古民家」の新しい仕事が始まった。今日の一枚はその解体の風景。今回は解体後に揚屋を行う。「あげや」といっても熱い油に入れたり、おだてたりするのではない。床を剥がして、柱同士を鉄骨で結び合わせ、ギリギリと建物を持ち上げる。持ち上げてからコンクリートで基礎を作ってもう一度建物を元の位置に戻すという作業だ。
全体に水平な状態を保ったまま持ち上げなければならない。これが難しい仕事で「曳屋」という独特な技術を持った職人が作業を行う。

古い民家は地べたに石を並べてその上に土台を敷いて建てている。斜面なら長い間に流れた土砂が堆積し、土台が埋まって、腐ることが往々にして起きる。
その為に、この家でも建物を持ち上げて、地べたから高い位置に土台を持ってくることになった訳だ。

さて、現在の法律では並べた石の替わりに鉄筋コンクリートの基礎の上に建築しなければならない。何千年もの建築の歴史から見れば、鉄筋コンクリートは新参物だ。しかし鉄筋コンクリートが無いと、現在では簡単な家も建てることが出来ない。変な話ではある。

ちなみに最古の木造建築は掘っ立て柱といって、地面に柱を埋め込んで建てていた、と言われる。「掘っ立て柱は腐る」という印象があるが、縄文遺跡の三内丸山では当時の柱が地中に残っていたという。
現在の構法の耐久性は如何ほどなのだろうか。

下の写真は1階の床板を撤去している所。「根太」とその下に「大引き」という部材が見えている。

この「根太」はその昔「垂木」と呼ばれて、屋根の材料だったもの。3本見える「大引き」の真ん中のものは2階の床梁か小屋梁だった。黒く煤けているのでそれが判る。一つの役割を終えたら別の役割を担ってきた。
こうした材料の使いまわしも、長寿命建築の手法の一種と考えられないだろうか。