吊階段

west2692008-12-12

今日の一枚は久しぶりに階段。これは 「下柚木の家」の吊階段。

雑誌などで見かける階段の多くは美しくデザインされていて、手摺も薄いフラットバーと呼ばれる鉄骨などで目立たないように処理されている。手摺の断面は小さい方が握りやすいが、小さすぎて自重で垂れ下がることもある。繊細で且つ強靭なデザインというのはなかなか難しい。

さて、階段の下は収納として使われるのが一般的だが、都市部の住宅では建築できる面積に限りがあるので階段の下も無視できない。

この家では階段の巾の半分を収納とし、残りの半分を開放的に使いたいということになった。階段の下に支えるものが無ければ尚宜しい。1階が広く使える。
それなら写真で見るように段板の先端を浮かせて作ればいいじゃないかという話になった。

難しそうだが、こういう話の展開は大好きなのだ。

さて、通常手摺は階段の段板から支えるのが普通だが、ここでは手摺から段板を吊っている。
ちなみに鉄骨の手摺から段板を吊ることを最初に考えた人は確かマルセル=ブロイヤーと言う建築家であると、ものの本に書いてあった。
我々が当たり前のように使っている手法もそうした先人の試行錯誤の賜物だ。知識としてしまいこんでいてはもったいない。ありがたく使わせて頂くことにした。

ベテランの工事監督は「この階段は揺れると思う」と主張していたが、一般的でない工法を漠然と行えば確かに失敗するだろう。長年の経験を生かして、様々に工夫を凝らしてくれた。
手摺の鉄骨を肉厚にし、ボルトの先端を2重ナットにした。段板に堅木を使い、壁に飲み込ませ、なおかつ階段収納の天辺と強固に緊結すると、しっかりした階段が出来上がった。