御神楽

west2692008-12-13

建築の世界には「オカグラ」と言う言葉がある。簡単に言えば平屋の上に2階を増築することをさす。我が家も当初の建築に東西南北継ぎ足して、とうとう場所がなくなり、4.5帖半の上に寝室を増築している。手掛けたのは向かいに住む大工さんだが、屋根を剥いて小屋梁の上に土台をまわして柱を立てた。これが「オカグラか」と始めての体験なので感心していると、「オタクは知らんだろうが、こういう方法は昔の農家じゃ良くやった。それほど特殊なことじゃない」と話していた。

今日の一枚は再生民家の「小木人の舎」
この家も今は2階建てだが、創建当時は茅葺の平屋だったと見える。内部の木材を調べてみると1階と2階で明らかに色が違った。50年ほど前に「オカグラ」をする際には1階の柱が傾いていたが、直さず2階の柱だけを垂直に立てたらしい。その後も傾きは進行し、最後は1階も2階も見事に傾いていた。

下の写真はその傾きを修正しているところ。

設計の段階では傾き修正の費用が無かったが、壁を取ったらグラグラしている。これなら、何とか矯正出来るんじゃないかと相談をもち掛ける。人の良い棟梁は、それじゃ、ちょっと試してみようと、早速大黒柱の根元から2階の床梁にワイヤーをかけて、チェーンブロックできりきりと引っ張ってみた。柱の頭が少しずつ元の位置に戻ってくる。これなら簡単に真っ直ぐな状態に戻りそうだと思ったが、そう話は単純ではなかった。

1階の柱をきちっと垂直にすると2階の柱が傾く、2階の柱を真っ直ぐに直すと1階が傾く、と言った具合になかなか上手くゆかない。考えてみれば初めから歪んでいるので直る訳が無い。
いい加減なようだが、さじ加減は棟梁の感覚しだいということになる。上下の柱それぞれの言い分を聞いて、双方の顔が立って、尚且つ床梁が水平に見えるように適当な所で納めて貰った。もちろん、壁は傾いていても窓と外壁は真っ直ぐに取り付けている。