外壁煉瓦の納まり

west2692009-01-20

今日の一枚は小田原の家の外壁煉瓦の納まり。

一週間ぶりに小田原の現場に行った。工程通りに作業が進んでいる。こんな当たり前のことをわざわざ書くんだから建築とは変な世界だ。

現場に着くと足場が撤去されている。職人が煉瓦を張っていた。煉瓦は通常「積む」のだけれど、諸般の事情から今回は「張る」ことになった。どうせ張るのならと、煉瓦の面と漆喰の面を平らに張ることにした。
こういう仕事を専門の用語というか俗語で「ゾロ」で仕上げるという。建築の世界では「ゾロ」の納まりは好まれない、異なる材料同士がぶつかる所には段差をつけて納めるのが「普通」なのだ。
「普通」というのは長い間の試行錯誤の結果到達した、合理的な方法とも言える。「安全」とか「無難」とか「平凡」、そして場合によっては「惰性」でもある。

「惰性」でも建物は仕上がるが、実はこうした部分の処理が建物全体の雰囲気を支配することが多い。
ポピュラーな素材を「惰性」で使えばありふれた建築になってしまう。ここは一工夫しなければならない。
しかしながら、多くの人が無条件に信じている「普通」の壁を突破するのは結構エネルギーが要るのだ。
黙っていれば「普通」に仕上げられてしまう。「ここは普通と違う」と言葉に出し、図面を描き、現物を手に持ち、身振り手振りを加えて説明しなければならない。

まだ途中だが、今日は説明通りにものが出来ているのを確認できた。一安心したがまだ油断は出来ない。

「煉瓦の表面がデコボコしているので、このやり方はきっと難しいんだろうな」と相手の事情も分かってはいる。でも、『目地巾も通常より広めにして、こちらも「ゾロ」に近く納めてね』ともう一度しつこく伝えてきた。

タイル職人は苦笑しながら「はいはい、解かりました」と答えていた。