命名は世界を切断する

west2692009-01-29

すでに御承知の方もいらっしゃるとは思いますが、昨夜アップロード後のブログを読んだ相棒の説明によれば、「名前が世界を切断する」といった意味のことを書いた人は養老孟司東京大学名誉教授とのことでした。
どうやら相棒が読んだ本の内容を大分前に聞いて覚えていたらしい。

人の手には「指」とか「手のひら」などといった部分の名称がある。単語としては独立しているが、「指」と「手のひら」は実際には分かれていなくて、連続している。だから言葉によって手は「指」と「手のひら」に切断される。
成る程。確かに顔と頭だって区別は合っても、境界線はない。牛乳だって「牛」と「乳」に分かれたらまったく違うものだ.....。

それはともかく、今日の一枚に見られるテントみたいな形をした建築はどうだろう。屋根の内側は天井でもあり、同時に壁でもある。立って歩ける高さにある部分を壁と言い、手の届かない高さになったら天井と呼ぶのかもしれない。この2者は連続しているが明確な境界はない。でも境界がなくたって誰も困らない。

以前同業の友人が、大きな嵌め殺しのガラス窓を設計したら、役所から「これは壁だ」と指摘されたと、ぼやいていた。
窓は英語で言えば「Window」で、風を意味する「Wind」が語源というから、固定されて風が入らない場合は「壁」なのかもしれない。しかし、光が入るから「窓じゃんか」と彼がいうのも解かる。どんな呼び方をしても実態は変わらないのだが、法律は時に曖昧なものに無理やり線引きをしてイタズラに消耗を強要する。

そういえば養老先生の著書の中には「バカの壁」というのも有った。

下の写真は再生民家の2階。再生前は確かに屋根裏だった。天井板を厚くして、人が立って歩けるようになったら屋根裏を2階と呼ぶようになった。