沈黙の水田

沈黙の春」という本が相棒の書棚にある。冒頭しか読んだことは無いけれど、殺虫の目的で農薬を使うと、食物連鎖が破壊される。最後は春が来ても鳥も鳴かない。
そんな内容と理解している。同じ頃「複合汚染」(有吉佐和子)という本を読んで、怖くなって、食べ物には気を使うようとは思った。しかし、いい加減な性格なのか緊張した生活は続かなかった。「たまにはジャンクフードも良いよね」とか「美味そうな添加物じゃん」などど居直るようになって、今じゃほぼ何でも食べる生活に戻っている(少しは違うかも)。
しかし、いくら楽観的になっても世界が変わる訳じゃない。あの頃よりさらに環境も悪化しただろう。トキもいなくなったし、このままじゃ人間だって危ないものだ。

今我が家の前にたった一枚だけ水田が残っていて、今日はその水田に水を引いた。雨も降っているので今夜はカエルが盛んに鳴いている。
彼らは機械の音が嫌いと見えて、電車が近づくと鳴き声が途絶える。数年前、夜間線路工事を行っていた時は一晩中ガンガン振動音を立てていたのでカエルたちはすっかりなりを潜めてしまった。カエルの鳴かない水田は生き物がすべて死に絶えた世界のようで、とても不気味だった。