大日本帝国海軍パン工房

west2692009-03-02

今日の一枚はコンクリートの表情。建築関係者以外の人にとっては「なんのこっちゃ」ではある。
コンクリートで建築を作る時は鋳型みたいな型を作って、まだ固まらないうちに流し込む。型のことを型枠というが、現在はベニヤなどの合板を使うのが一般的だ。この建物は戦前のものだから、型枠に桧の板を使っていた。仕上げ材であるプラスターの剥がれかかったところから、こんな風に昔のコンクリートが顔を出している。版画というかフロッタージュというか木目の表情が残っているのが面白い。

ル・コルビジェマルセイユのユニテの建設で、日本人が隠したこの表情を「コンクリート打ち放し」と称して表現にまで高めた。ローコストな建築を作品化する逆転の発想だった。精神的にはル・トロネの「粗い石」と同じものがあったんだろう。

さて、「コンクリート打ち放し」はその後日本でも大いに流行したが、「粗い石」から「精緻な石」に変わって行った。日本人的な感性なのかな。このような桧型枠のコンクリートは今ではとても高価なものになっている。
実はこの建物は横須賀にある、旧日本海軍の建物。当時は飛行機を造る人のためのパンを焼いていた場所だったという。でも何故、飛行機を造る人のためのパンをここで焼いていたのかは判らない。
戦争に負け飛行機を造る人もパンを焼く人もいなくなり、今では家具を作るある企業が使っている。


下の写真は旧造船所。最近まで昔のスチールサッシュがまだ使われていて、レトロな雰囲気が残っていた。