コブノシ

west2692009-04-23

今日の一枚は南アルプスの再生民家の屋根。
一体どこを直したのか?といった風情だが、直したどころか、以前 「加賀美の古瓦」に書いたように手前の部分は古瓦を使用して新しく復元したものだ。写真に写っている部分は1階の屋根と2階の壁のぶつかる部分だが、この家は長い間にいろいろと改造が施されていた。今回は持ち主からの聞き取りや痕跡を元に昔の形に復元することになった。
さて、このような瓦と屋根の取り合いの凸凹した瓦の納め方は「コブノシ」というのだそうだ。
なんだか食べ物みたいな名前だが、瓦の部品なのか納め方なのかどちらを呼ぶのか実は良く解からない。通常は熨斗瓦と呼ぶ平らな瓦を三段くらい積んで雨に備えるのだが、この家はこの見慣れない「コブノシ」というやり方でやっていた。屋根と壁のぶつかる所に互い違いに凹凸部分が連続して変化を見せていたのだろう。もしかするとコブ付きの熨斗瓦の意味かもしれない。
長い間にずり落ちて「コブノシ」は無くなっていたが、不思議なことに雨は漏らない。もちろん現在のような防水紙も貼られていない。聞くところによると瓦から進入した雨水は屋根や壁の下地に使われていた土が吸収し、屋内に染み出るのを防いでいたのだという。嘘か眞か、雨への対処方法が基本的に違う訳だ。今ならクレームの対象じゃないだろうか。
こんな風に、遠めには同じように見えてもよくよく見ると細かい所に見どころがあるところも民家の面白いところだと思う。
ちなみにこの「コブノシ」に使用した部品も平部分の古瓦と同様に同じ屋根から古い部品を集めて再利用している。
下の写真は漆喰用の壁下地。土壁が望ましいが、工期がない。しかし、ボード類は極力避けたいとの建築主の要望により杉材の木摺りを打ったところ。なかなかきれいなので「このままでもいいか」という気になる。