思考と製図

west2692009-05-30

久しぶりにCADを使って図面を描いた。
CADというのは我々の業界では設計図面を描くためのコンピュータソフトのことをいう。建築を習い始めて最初にやったのは、鉛筆で1ミリ方眼を描くことだった。近眼だったから近くは良く見えたのでこれは簡単だった。「1ミリの中に何本線が描けるか」なんてこともやった。透視図の描き方も覚えた。これは難しかったし、何よりも時間が掛かった。しかし、下書きの交錯した線から立体的な建築が浮かび上がってくるのが面白かった。
自分流の製図スタイルが出来た頃、コンピュータ製図が出現した。設計図面はもとより、透視図も簡単にできる。しかも出来た図面をくるくる回してあっちこっちから眺めたり、内部を歩いたりできる。その上、今度は老眼になって近くが見えなくなったが、CADで作った図面ならばいくらでも拡大できる。そういう訳で便利ではある。
ところが、鉛筆で図を描かないと考えがまとまらない。トレーシングペーパーに鉛筆描きなら思考と製図が同時進行だが、CADはそうはいかない。思考と製図の間にある機械操作という段階が障害になるわけだ。簡単な図なら問題ないが、複雑な図になると描いているうちに浮かんだアイデアが消えてゆく。そんな訳で急いでまとめたり、ヤヤコシイ設計を仕上げる時はセッセとスケッチを描きスタッフが製図する。作業効率の為にCADを導入したはずが、忙しい時は鉛筆が頼りという変な話なのだ。