昭和5年10月27日の新聞

west2692009-06-13

昨日は県立図書館に行った。今度壊されてしまう運命の旧山梨県立図書館(県庁舎第一南別館)の設計者を調べるためだ。考古学協会のM氏の説では設計者を特定することはとても重要なんだそうな。公共性の高い建築の建設前後には何らかの新聞報道があるはずだ。図書館には新聞がマイクロフィルムに保存してある。調べればわかるだろうとのことだった。
地元紙である山梨日々新聞の昭和5年10月27日に完成式典の様子が書いてあった。これは収穫だったが、設計者は依然謎のままだ。施工した会社は今でもある。東京の大手ゼネコンだ。図書館で待ち合わせた建築史家のK氏がゼネコンの連絡先と担当者を教えてくれた。そこに聞いてみれば判るかも知れない。
さて、当然のことだが新聞には当時の様子がいろいろ書いてあった。時間が無いのでじっくり読むことは出来なかったが、家出・無賃乗車・交通事故などを始め、役人の不正・政治家のテイタラク・議会の混乱、企業倒産・雇用創設など不況に苦しむ庶民生活を思わせる見出しが並ぶ。ちょん髷物の小説と、アール・デコな衣装をまとった裕福そうな男女が登場する小説もあった。新聞の下半分は広告だ。金さえ出せばとりあえず夢が手に入りそうな気がしただろう。
上段の記事には不況で庶民の生活は苦しいと書いてあるのに、中段の小説で消費生活を描き、下段であれも買え、これも買えと消費を煽り立てる。79年前も今も基本的なところは同じかも知れない。茶色い戦争を挟んで、失敗を反省してやり直したはずだけど、世の中はほとんど何も変わらない。「欲しがらせておいて、与えないのが資本主義」(水木しげる)なのだ。