標準化と地域性

west2692009-08-01

今日の一枚はバンブーネット。これは土塗り壁の下地。
このままでもきれいだけど、住居として実用には耐えない。残念だが壁土で塗りこめてしまった。
建築基準法では建物の地震に対する安全性を壁で確保することになっている。例外もあるけれど乱暴な表現をすればこうなる。それで壁の強さを数字で表す。数字は基準の強度を仮に1とすれば、この壁はその何倍なのかということを示している。大雑把な話だが、2なら2倍、5なら5倍という事になる。
この住宅を設計していたときは土壁の壁倍率は0.5倍だった。土の壁なんて、「何も入ってないよりはマシ程度なのさ」というのが当時の法律の考え方だ。だから、写真のようにステンレスのブレースを入れて補強している。
土壁の建築は時間が掛かる。のんびりやってたら、この壁が出来たころと前後して、その法律が変わった。「ちゃんと作れば、1.5倍にしてあげる」という。いい加減な話だ。もっと早くやれと言いたい。
さて、下の写真は長野市で見かけた土壁の下地。葦小舞とでも呼ぶのかな。

山梨のような竹で組んだ小舞ではなくて、葦だった。この辺りの川で葦が取れるらしい。民家の建設はこのように手近な素材の活用が基本だと思う。新しい法律では土壁の下地には「竹」と決まっている。「葦」はどうなんだろう。土壁の工事が法律的に位置づけられて喜んでいても、全国一律の仕様が厳密に決められると、こうした民家の地域性は抹殺されてしまう。悩ましい問題ではある。