「日本人の住まい」について

west2692009-08-15

今日の一枚は茅葺屋根の軒裏。新旧の茅を帯状に葺分けた意匠はこの地域の特徴のひとつでもある。これは茨城県八郷町の農家で見かけた。大森貝塚の発見でも知られるE・S・モースが書いた「日本人の住まい」という本にも茅葺き屋根のこの処理方法が書いてあった。この本には日本の住宅が構造・建設方法・住まい方に至るまで、克明に記録されている。
トントン葺きの竹釘の打ち方や、天井板の端部の処理方法、屋根瓦葺きに使う泥の入手方法など、外国人が書いた当時の日本を紹介する書物で、初めて知ることもある。考えてみると、それも変な話だ。
さて、現在の東京ではツバメの営巣が見られなくなったという。しかし、明治のころはツバメが屋内に住み着くことは吉兆とされ、ツバメが巣作りしやすいように家の中に棚板まで造っていたという。モース氏によれば「これは、日本人の優しさのありようと、かれらが動物に対して表す憐れみの心を示す多くの実証的事項の一面を物語っている」のだそうだ。
東京からツバメが姿を消す数年前、どこかのダムに造ったイワツバメの巣が景観上不都合なので放水銃で片付けたという新聞記事を読んだ。日本人も随分変わったものだ。モースさんが知ったら、本を書き換えたくなるだろうな。
前書きを読んだら、1885年の出版だった。124年の歳月はあまりに長い。

そんな訳で下の写真は東京の虎ノ門。地下鉄神谷町出口近くにある八幡神社の前で、炎天下、元気に神楽を演奏していた。こうして継承されてゆくものもある。