鋸引き700回

west2692009-10-22

長野県の千曲川流域では泥壁下地の小舞に竹の替わりに葦が使われることがある。以前、更埴市内で見た解体中の民家の壁には葦が使われていた。今回の再生工事でも地域の伝統に敬意を表して葦小舞を使うことになった。
ところで、土壁を造るにつけて泥の用意は可能だが、葦はどうやって手に入れたら良いか解からない。
建築主のM氏に訊ねると、「秋になれば用意できます」とのことだった。工業製品の入手はカタログを探して電話するのが一般的だが、自然素材は土と水と光と空気が造る。カタログはない。ただ待つしかない。
今日の一枚は秋になった「篠竹」。これは泥壁の小舞の間渡し部分に使用する。計算すると、凡そ700本必要となる。細くて弾力がある。切り口はスパッと行かなきゃならないので、良く切れるノコギリでギコギコと一本ずつ切って集める。700回それを繰り返す。
葦の必要な本数はなんと12,000本。大変な数量だが、建設現場近く歩いて15分くらい離れた川沿いに無数に生えていた。下の写真。

何もしなくても毎年こうして生えてくるんだと漠然と思っていたが、「毎年刈った後、火入れをしないと雑草が生える」のだそうだ。昨年はそれをやっていないので、様々な雑草が混在し、ツタも絡み付いている。自然素材を有効に活用するためには人工的な管理が必要なのだ。河原の枯れススキだって世間と無縁ではいられない。
そんな訳で、刈り取るのは容易でも必要な葦をより分け、運搬するのが大変なのだ。その後、太さ1センチくらいの茎を約4センチ間隔で格子状に編む。