手の跡を残す

west2692009-12-04

今日は伝統構法に関するヒアリング。金物をあまり使わないような昔の建築方法を実践している大工から話を聞きたいということで、マサカリ大工を紹介した。
作業場に着くと、マサカリ・チョウナ・オガ・ヤリガンナ・石斧・石ノミ・木楔など原始的な手道具が並んでいた。「伝統構法とは何か」どころか、木材加工技術の始まりの話になった。それは穴とホゾなんだそうだ。つまりは木に穴をあけて、そこに別の木を差し込む。それだけの加工が出来れば建築は可能なのだ。そのためには鉄でなくても石で十分可能なのだというのが彼の主張だった。大工道具は加工精度と作業性の向上を目的に変化して、手道具から機械作業に行き着いた。進化したかもしれないが、それが大工仕事の価値を下げてきたんじゃないのか。乱暴な言い方をすれば伝統構法を守るためには「手の跡を残す」建築技術の見直しが必要なのだと思う。
聞き取り調査の後、実例を見に行った先で、こんなものをご馳走になった。→今日の一枚。自宅の庭に造った水車で曳いた蕎麦粉で作った蕎麦湯。正式な蕎麦湯は麺を茹でる際の汁じゃなくて、初めから蕎麦粉を溶いて作るとのこと。
下の写真は土壁。

この壁は荒壁仕上げだが、表面は焼き物のように硬い。ひび割れも少ない。通常荒壁の表面はもう少しざらついていて、引っ掻くとボロボロと取れる。しかし、塗り込む直前に土を練り直すとこんな風に硬くなって、ひびも割れにくいのだそうだ。工事の途中で近所の子供たちが土壁体験に来た。そのときの手の跡だが、これなら当分消えない。