泥縄式その後

west2692009-12-03

先日泥縄式の話をしたが、今日の一枚は泥そのもの。瓦の葺き土なのだ。宮光園に行くと、トラックの荷台に泥が乗っていた。これで屋根の瓦を葺く。最近ではというか、もう遥か以前から見かけなくなったが、かつては土葺きといって、瓦は土を使って屋根に固定していた。そんな風に教科書では習ったけど、実務でお目にかかったのは文化財に関るようになってからだった。普通の住宅建築で見かけることは先ず無いだろうと思う。
さて、下地が多少デコボコしていても土の厚さで調整して屋根は平らに葺きあがると以前にも書いた記憶がある。
泥は乾けば硬いけれど、水であっけなく解けて流れる。そんな心もとない材料を使って瓦を固定する。さらに、瓦は泥を焼いたもの。茅葺きも杉皮葺きも板葺きも同じだが、本来的には水に弱いはずの素材を加工して、雨を防ぐ。そんなところも、伝統的な建築の面白いところだと思う。
水に弱いといってもこれで案外寿命も長い。瓦は40年、茅葺も40年、杉皮も20年以上使われている事例を知っている。板葺きはどの位なのか判らないないけど、見たところ10年くらいは平気に見える。因みにガルバリウム鋼板などの現代多く使われる材料の保障期間が10年という。意外に耐用年数に大きな差は無いのだ。
そんな訳で、下の写真は新旧の瓦を並べて葺いた所。左手前に見られる傷だらけの瓦がオリジナルの瓦。推定明治25年生まれ。こうやって泥と銅線で固定してゆく。向こう側に見える、色白でサラッとした方が今回復元した瓦。