波平屋根

west2692010-08-13

今日の一枚は茅葺屋根の表面。出来てから1年経っていないので、まだ切り口が新しい。
塩山から大菩薩峠に向かう途中に上条という集落がある。ここには甲府盆地東北部の典型的な養蚕農家が10数棟残っている。これはその中の一棟で再生工事を施して今年の4月に公開したばかり。
6,7年前にこの集落のお年寄りに草屋根の話を聞きに来た。
この辺りで屋根に使われる葺き材は茅が使われることは少ない。畑で栽培していたのは麦が多いからそれを使ったとのことだった。麦も大麦と小麦の2種類あったが、さて、どっちが使われていたんだろう。聞いたはずだが忘れてしまった。さらに聞けば、麦が不足したときは稲藁で葺いた。寿命も短くて確か10年程度だった。
この手の屋根は書物などで「茅葺」と呼ばれているから見過ごしていたけれど、子供の頃近所の草葺の家は「ムイカラヤネ」と呼ばれていたことを思い出した。代用品だったはずの麦も稲も今は入手できなくて、ここではススキ茅を使っている。
見覚えのある屋根の風景とは何処となく違うと感じるのはそのせいなのかも知れない。
下の写真は屋根の棟に生えた草。

目指したのは芝棟のつもりだったけど、育ったのはどうやらセイタカアワダチソウらしい。まばらに生えているので、関係者は「波平さん(サザエさんのお父さん)の頭」と呼んでいるんだそうな。
風景を再現するためにかつての手法を用いても、出現するのは異なる風景だ。失われたものを取り返すのは難しい。