人間の道

west2692010-09-12

「4段ある階段板のうち3枚は柾目だが4段目だけ木目を見せていますね。ちょうどこちらから見る目の高さと同じです。向こうからもこちらを見ている。そうやって厳しく自分と向き合う場所です。」
今日の一枚は瑞龍寺という富山県のお寺。これは仏殿。
なかに入って写真を撮っていたら、何処からともなくお坊さんが現れた。『もしかして禅宗の寺なのかな』と思っていたので質問したら、そんな返事が返ってきた。
そして「この寺は願い事をするための場所じゃありません。自分にとって都合の良いことではなくて、人間の道に照らし合わせて正しいことを決断してゆかなければならない。ここはそういう場所なのです」と続く。
厳かな話を聞いているうちに、だんだん俯き加減になってくる。最後に彼の足もとに目を落とすと、僧衣の下から黒革のビジネスシューズがのぞいていた。
その後、境内のあちこちで遭遇したが、寺内のあちらこちらを歩き回っては、参拝客に次々と説法している。なるほど、革靴の謎が解けた。
下の写真は仏殿の屋根。

そもそもの目的はこの屋根を見ることだった。鉛でできているが、瓦の形をしている。素材が変わっても、慣習的な形が変わらないのが興味深い。
ところで、寺は戦国大名の前田家の庇護を受けていた。外様大名なのでおおっぴらに軍備の増強はできない。そこで、鉄砲の玉に使われる鉛をいざという時のためにこうやって備蓄していたんだそうだ。