良好なまちなみ

west2692010-12-10

こちらは再生中の民家の足元。昔ながらの石場建てという構法なのだ。何故か柱が石の中心から数センチズレている。真偽のほどは判らないが、石の上にこうして柱を建てる工法は地震時に滑べることで地震の力を軽減するという話も耳にする。
この建物は遥か昔に大地震に見舞われて、その際に隣接している土蔵が大きな被害を受けたが、持ちこたえたらしい。これはもしかしてその時滑った跡なんだろうか。
もう一枚は韮崎の水路。

韮崎の家で建築文化賞を貰った時の受賞理由は「良好なまちなみ景観を形成している建築物等の部門」だった。久しぶりに訪ねると裏通りにあった石積みの側溝がこんな風にコンクリートの放水路に変わっていた。
石垣の隙間や水底の小石の下に見え隠れしていた蟹もいなくなってしまった。流れる水が速い。これでは生き物は住めないだろう。
良好なまちなみは一棟の建物だけでは形成できない。周辺の何気ない景観があるから建物が生きるのだ。環境とか景観とかまちなみとかと騒いでも、現実にはこうやって足元の小さな景観や環境の破壊は見落とされて行く。そうした行為が積み重なって、気が付いた時には取り戻すことができなくなっている訳だ。