大地に還る

west2692011-01-15

度々話題にするけど我が家は42年前に現在の場所に移築されている。移築される前は桃畑の一角に、いわゆる石場建てという構造で建っていた。その時の基礎は現在のような鉄筋コンクリートではない。子供でも動かせる程度の自然石をぽつぽつと庭に置いてその上に土台を敷いて柱を立てている。建物を解体して、土台をどかして、コロンと石を転がしたら元の地面に戻った。あとには何も残らない。越した後、訪ねて行ったら桃畑に戻っていた。文字通り「大地に還る家」という奴なのだった。
さて、今日の一枚は廃屋。撮影日を見ると2009年10月11日とあった。人がいなくなって、もはや機能の束縛からは自由になった。単なる「もの」になっている。漆喰の白、瓦屋根の灰色、風化した板の色、錆びた鉄の色がなかなかきれいだと思った。背景の緑と青い空も効果的なのかも知れない。
ペン入れして彩色したら面白いかもと、記録のために写真を一枚撮ったきり、家に戻ったとたんに忘れてしまった。
一年数カ月ぶりに前を通ると、こんな風に建物は取り払われ何も残っていなかった。

地面を掘り返したり、埋め戻したりした形跡もなさそうだ。きっとこの建物も大地に還る家だったんだろう。