珪藻土にベンガラを混ぜる

west2692009-03-13

昨日のベンガラ混入仕上げのきっかけはこの一枚。これは珪藻土にベンガラを混ぜている所。
経歴不明・正体不明の古い民家「小木人の舎」再生工事の現場。
経歴不明というのは創建年代がわからないという意味で、正体不明というのは改変が著しく元形が判らないからだが、本人というか当の民家は「色々有ってね」という感じで多くを語らない。元の持ち主も高齢で御記憶は定かではないという。若くても忘れてしまって思い出せないことがあるから仕方がない。過去は問わないこともある。
さて、過去が無い反面、自由でもある。伝統やら様式にこだわらず、アイデアを発揮できる利点もある。色も部材も新旧取り混ぜて再利用した。こういう乗りの再生工事も面白い。
予算の厳しい現場では機能・性能・規模・構造を整えるのが主な目的となる。仕上げを凝っている余裕はあまり無い。出来るだけ安くシンプルなものを採用する。
民家の定番は白い壁・黒い木材・黒い建具。シンプルなのは良いけれど、単調すぎると面白くない。あらかた壁が塗り終わる頃、床の間がなんだか淋しく見えた。この辺の感覚は微妙だけれど、とにかくそう感じた。
ここで一発何か欲しいが、予算が無い。それじゃ、珪藻土に色をつけたらどうだ。早速、左官の親方がベンガラを(何故か持っていた)大匙に少々混ぜてこんな色の壁材を造った。
下の写真は出来た材料で壁を塗っている所。

スプーン少々のベンガラで随分華やかになったと建築主には喜んでもらえた。思いつくのは簡単だが、実現するためには設計意図を解かってくれる職人が必要なのだ。親方は色むらが出ないよう慎重に、しかし一気に塗り上げた。