製材の話

west2692009-03-14

今日の一枚は建て方前の材木。柱や梁、土台などが混じる。これを組み立てて家が出来る。ある年の2月、設計の依頼を受けて訪ねて行くと、裏山につれて行かれた。山の斜面には松や桧や杉やサワラが転がっていた。約200本ある。現在は「葉枯らし」中だが、これで家を建てるという。
およその太さと長さを見定めて、大まかな設計を行い製材所に運び込むことにした。製材所もなかなか見つからなかったが、運搬もなかなか大変だった。
建築主から聞いた話では山から運び出すためには「3、4メートルの長さに切断する必要がある」と運送業者は言ったとのこと。機械や道具の都合で決まるらしい。しかし、そんなに短くしては意味が無い。交渉の結果、最大10メートル、平均7,8メートルの長さで運んだ。
さて、丸太の太さや曲り具合や長さはそれぞれ異なる。製材屋のおっちゃんと打ち合わせしながら、丸太ごとに部材の大きさを決めていった。きれいな材木が取れた。「最近は輸入木材ばかり売っている。製材は久しぶりだなあ」と話していた。
木材はとことん使う方針なので、構造材に曳いた後の材料は厚さ6センチの板にして外壁に使った。いわゆる「落とし板構法」だ。伝統的な造り方で、木材の有効利用にもなる。いい方法だが、当時の建築基準法では認められていなかった。仕方なく、構造計算をして建築確認を行った。今なら良いらしい。本当に不思議な法律だと思う。
下の写真は建て方を終え、屋根を葺き上げたところ。

最近、材木屋の前を通りかかった。貯木場も製材工場も消えて、更地になっていた。あのおっちゃんはどうしているんだろう。