犬も歩けば

west2692009-05-05

今日の一枚は鉄平石。佐久に住むMさんから見せてもらった民家の屋根は石で葺いてあった。撮影場所は望月の畳石という集落。近くに石切り場もあるという。
民家は身近な材料で造られると言われているが、現在の建築工事では再生民家であっても屋根に使う材料は瓦や金属板が多い。現実にはそれらをカタログから選んでいるのが普通だろう。
こんな近くに現物があるなら、一部でもいいから石を使ってみたい。「犬も歩けば棒に当たるという」ではないか。棒があるかもしれない。先ずは現地に偵察に出かけた。

Mさん夫妻の案内でたどり着くと、集落のあちらこちらに鉄平石が落ちている。かつては屋根に葺かれていたが、今では瓦に葺き替えられているので不要になった石が処分されずに畑や庭の片隅に置いてあるのだ。今日の写真はそんな一枚で、これは道端に転がっていた。
「もてあましてるんじゃなかろうか。何とか手にはいらにかなあ」と思いながらウロウロしていると、畑で働いているおじいさんがいた。話を聞いてみることにした
以前は良い石が取れたが、今は砕石ばかり。良い石は薄く割れる。石は叩いて音で見分ける….等など。
石を使えないかと訊ねると。「止めておけ」という。重たくて建物には不利だし、ここは産地だが、扱っている石は輸入品ばかりだ。第一職人がいない。子孫が困るぞ…云々。
一見無口な人だったが、石を語り始めると饒舌だった。さすが地元だけあって普通の人でも詳しいものだなあ、と感心していたら元は石屋で働いていたとのこと。
最後には集落内に残っている使える石を置いてある場所と、近隣で唯一石葺き屋根を葺ける職人を教えてくれた。どうやら棒に当たったらしい。
下の写真は、そのとき教えてもらった、この集落でも最も古い石葺き屋根の1つ。

棟押さえの細い棒状の部品も鉄平石を加工したものなのだ。