瓦の焼成温度について

west2692009-06-22

今日の一枚は鬼瓦。宮光園主屋の大屋根に乗っていた。週に一度の定例会議を終え、現場事務所の外に出たら、丁度瓦職人が鬼瓦を屋根から下ろしてきた。屋根が大きいと比例して鬼瓦も大きい。ちなみにこれは、真ん中の「甲」の文字を書いた部品と、足になっている2対の雲形模様の3つに分かれるようになっている。傷み具合を確認するために軽く叩いてみた。しっかりした瓦は金属的な音がするが、こちらは鈍いくぐもった音がする。
聞くところによると瓦を焼く温度は約1000度。出来上がった瓦は硬くて、叩くと金属的な音がでる。しかし、この瓦に使われた土はそこまでの高温に耐えられないもので、音も鈍いのだとのこと。この瓦は軽いし、密度も薄い。高品質とは言い難いのだそうな。「ふーん。そうなのか」。
よく見るとあちらこちらに釜焼の際に発生したひび割れが残っていた。現在の規格なら不良品かもしれないが、昔の人はそういうことはあまり気にしなかったと見える。80年近く屋根の天辺で風雪をしのいできたのだから、結果的に問題はなかった訳だ。ここはひとつ先人に倣うことにする。
この鬼瓦はこの先さらに何10年と再使用する。せっかくここまで生き残ってきた。うっかり壊さないように倉庫に運んで保管した。
梅雨の季節だ。今日も雨が降っていたが、現場に行くと覆い屋が掛かり、こんな風に瓦を取り外していた。

これなら雨が降っても作業が可能だ。近くで見ようと、恐る恐る屋根に上ったところ、パキパキと瓦が割れた。「シマッタ」と戸惑っている傍らを、瓦職人がすたすたと登っていったが、瓦の割れる音は聞こえなかった。