鉄のダーマトグラフ

west2692009-09-15

ダーマトグラフという鉛筆状の筆記用具がある。ちょっと太目の色鉛筆の芯みたいな奴が紙で巻いてある。カッターやナイフで芯を削り出す代わりに、紙をクルクルとほぐして芯を出してスケッチなんかする奴だ。
今日の写真はダーマトグラフにも似ているが、これでスケッチはできない。鉄板の小波板というもので出来た庇の端部の納まり。だいぶ錆びているけれど、このバームクーヘンみたいな部分は小波板の端部をクルクル巻いて造ってあった。
小波板はローコストな素材だから、ほとんど場合、取り合えずというか、間に合わせの仕事として、応急処置みたいに使われている。この庇も最初はそんなものに見えた。足場を掛けて、近寄って、良く見たらこんな風になっていた。鉄の棒がはめ込んであるのかと思ったけれど、連続した一枚の板で出来ている。これで端がペラペラしない。強風にあおられることも無い訳だ。案外手の込んだ仕事だった。思いがけない加工が施してあり、意表を突かれてしまった。昔の人の仕事はあなどることはできない。
そんな訳でもう一枚は円覚寺で見かけた鐘。

「洪鐘」とも「梵鐘」とも呼ぶ。立て札には鎌倉時代のものと書いてあった。こちらは同じ金属でも厚みも重さも相当あるに違いない。しかし、どちらも金属という硬い素材が、一瞬柔らかい素材に見えてしまう所が面白い。