杉皮ルーフィング

west2692009-11-16

今日の写真は屋根下地の杉皮。
現在の家造りでは屋根材の下地にはルーフィングという工業製品を張るのが一般的だろう。そのまた昔はこんな風に杉の皮を敷き並べ、縄を巻いた竹で押さえていた。屋根の仕上げはこの竹に銅線で瓦を縛り付けて留めてゆく。杉皮の表面はデコボコしているが瓦を敷く際に載せる土の厚さで調整し、最終的には平らに仕上がるのだ。
現在の瓦葺きは土を使わないので、下地がデコボコだと屋根もデコボコになってしまう。下地から緊張の連続で仕上げてゆくが、昔のやり方は途中をおおらかにやって、最後に職人が目で見て調整することで綺羅に仕上がる。どちらが高度な仕事なんだろう。
この屋根は昭和5年頃に葺き替えられたものだが、防水下地に使われた古い杉皮もまだ原形をとどめていた。今年は別の所で、40年前に葺き替えた屋根の下地を見る機会があった。アスファルトを塗った防水紙が貼ってあったが、脆くなってボロボロだった。雨ざらしの状態なら瞬く間に腐る杉皮が、使い方によっては工業製品のアスファルトより長い寿命を保つ訳だ。
瓦職人はそのことを知っている。「現場によっては、杉皮の代わりに防水紙を張って、土葺きの指示を受けることもあるんですよ。土の定着も良くないし、屋根裏は高温なので防水紙は杉皮より先に傷みますがね」と話していた。
我々も設計時には杉皮だけで本当に大丈夫なのかと悩んだ。彼らの経験や知識と、現代の常識や慣習、そして思い込みとのギャップは大きい。お金は掛かるが、もしかすると現代住居の屋根でも杉皮を使うほうが長寿命かもしれない。
下の写真は下地の杉皮を張り終え、瓦を荷揚げした所。