板に木目を描く

west2692010-09-07

今日の一枚は「木目彩色(ペンキ木目ともいう)」。
明治初期に建てられた擬洋風建築の祝(いわい)学校に使われていた建具のアップです。宮光園にある。天皇が訪れる際に増築したといわれるトイレの扉に何故か使われていた。
同様の扉は同じ町内の旧田中銀行にも使われている。
さて、肝心な「木目彩色」だけど、一体なんのこっちゃと言えば、板の上にペンキで木目を描いているのだ。右上から左下に描かれた斜めの線がペンキ描きの木目。垂直に近い線が本来の木目。自然な状態の板の節や、継目や不揃いな木目を消して、その上にペンキで一枚板に見えるように木目を描いたらしい。
現在の感覚では良く判らないが、考古学者M氏によれば「それが時代の流儀」だったんだそうだ。とにかく成程と納得するしかない。
10年ほど前、塗装職人に、これはどのように描くのかと聞いてみた。「想像するに、まず、茶色い塗料を塗り、乾かないうちに白い塗料を塗って、即座に櫛で引っ搔いて描くんだと思う。誰にでもできることじゃない。名人芸だね」とのことだった。
今回は復元する予定がないのでクリアー塗装を塗って保護しておく。
下の写真は木目彩色を施した扉の全景。

旧田中銀行の入り口に使われている。白っぽく見えるところが木目彩色の模様。これも失われてしまうかも知れない技術の一つ。