ベンガラ入りの土壁

west2692008-11-21

塩山の再生民家の土壁は建築主が仕上げることになっていた。正月に様子を見にゆくと、土間に赤い土壁のサンプルが幾つも置いてあった。実験的に中塗り土に ベンガラを混ぜてみたという。

話は突然変わるが昨年、昌福寺というお寺の庫裏を耐震補強した。

江戸時代の建築なので補強方法も伝統的な木造構法で行うことにした。伝統に倣うので壁も昔のような土で造らなければならない。
せっかく土壁を造るのだから、漆喰で仕上げるだけでなく、土壁の表情も生かしたい。
しかし、土の色だけで全体を仕上げるのは単調だ。少しは変化が欲しい。そこで前出のアイデアを頂戴して土にベンガラを混ぜて着色することにした。
そんな訳で今日の一枚は中塗り土に赤・黄・朱のベンガラを混ぜて実験している所。

黄・朱のベンガラは少々混ぜたくらいでは本来の土の色とさほど変わらない。試に顔料の量を増やしてみたが、鮮やかな色は出ない(中央の黄色)。なんだか京都の「入洛土」みたいになったが、手間ひまかけて、紛い物を造っても恥ずかしい。考えてみれば相手が土だからくすんだ仕上げになるのは当たり前の話だが、やって見て初めて合点が行く。こういうのを後知恵というのかな。最終的に赤が最も発色が良いことが判った。

さて下の写真は赤ベンガラを混ぜた土壁仕上げ。

漆喰や珪藻土にベンガラを混ぜると色斑が出やすいが、始めから色斑のある素材である土の場合は気にならない。むしろ表面に微妙な変化があって好ましい仕上げになった。土にベンガラ1袋入れるだけでこんな壁が出来上がることが判ったのは大きな収穫だ。
壁の足元に張ってある板は床に使われていた古材の再利用。住職さんは此処に掛け軸と花入れを置いて床の間風にしつらえている。

ちなみに昌福寺は江戸時代から続く虫切加持の祈祷で有名なお寺です。