丸にニの字

west2692010-08-31

今日は昨日の続きで宮光園。これは雨戸を収納する戸袋に家紋を作っているところ。
「丸に二の字」というもの。左手に小さな木片を持ち、それを定規にモルタルを擦り付けて、くるくると丸い輪を作ってゆく。迷いがなく、とても速い。
さて、修理前の建物には雨戸が無かった。戸袋も残っていない。でも、この時代の民家に雨戸が無いとは思えない。復元の根拠になるものを探してみたが、どうやらそれらしき痕跡があったが、決定打ではなかった。
宮光園は山梨のワイン醸造の草分け的存在でもあるが、観光葡萄園の黎明期の施設でもある。創業者は新しいものが好きだったと見えて、写真がたくさん撮ってあった。アルバムをめくっていると、紋付袴の人物が足早に通り過ぎる背景に戸袋が見える。洗い出しの鏡板に家紋まで写っていた。存在が確定すると、「それらしき痕跡」は具体的な証拠となる。何だか判らなかったものも意味を持つ。痕跡の寸法と写真をもとに図面を描き起こした。
左官職人は図面を基にこんなものを作ってきた。アルミ製の定規。

鏡板に張り付けて「下地だから図面より一回り細いけど、これからもっと太くなる。その辺を考慮して、図柄の位置を最終確認してね。これで作っちゃうから」ということだった。確かに図面上で見る位置と地面に立って眺める場合では見え方が違う。監理に来る時間を見計らって準備していたのかな。段取りが良いのだ。