行く川の水は同じ

west2692011-11-24

写真は土蔵の鉢巻の部分。訳あって土蔵の鉢巻について調べた。関連の本も調べたけれど、教科書通りの仕事は案外少ない。

さて、今日は水車の話。近くを流れる水路を使って発電する計画がある。「行く川の流れは絶えずして」と言う位だから、水は無尽蔵だ。水車で電気が出来るなら、稼働の為のエネルギーコストはゼロに近い。実に好都合で、結構な話だと思ったけど、これがなかなか難しい。
水路の水が河川から流れてきたものなら、これを使うためには国土交通省に申請というか、諸々のかつヤヤコシイ手続きが必要になるとのこと。年間を通して水量も測らなければならない。それには、測定機械の設置に多大な費用を要する。発電で賄える電気代にはるかに及ばない。
しかし、川の水を利用することが、どうしてこんな大げさなことになるのか。子供の頃近所の家では川で洗い物をしていたが、そんな難しい手続きをしていたのだろうか。
ところで、件の水路の水は沢から集まってきたらしい。地図を見ると、水路の上流は山の中で消えている。この場合は上記の手続きは不要になるとのこと。だがきっと下流で河川に合流すると、そこから先で利用する場合はヤヤコシイ手続きが必要になるのだろう。流れる水は何も変わらないのに、場所によってまったく次元の異なるものになる訳だ。

そんな訳でこちらは事務所近くの水路の底に沈んでいた葉っぱ。

探し物の日々

west2692011-11-21

今日の一枚は向かいのビル。日没がすっかり早くなってしまった。忙しいのか、要領が悪いのか、一日がとても短い。
事務所に着いて荷物を広げる。ノートが二冊見当たらない。朝、部屋を出る時持ったはず。うーん。昼休みに家に帰ると下駄箱の上に置いてあった。靴に履きかえる際に、一旦置いてそのまま忘れたらしい。
写真を撮ろうと三脚を持ち出した。カメラを取りつけようとすると雲台が無い。机の上、机の下、事務所の中、カバンの中を探したけれど見つからない。自宅に戻って、玄関、広縁、食堂あちこち探した。タンスの中のジャケットのポケットも探ったが見つからない。諦めて事務所に戻ろうと、自動車のドアを開けた。後部座席には何故か傘が3本置いてある。片付けようと持ちあげたら、探し物が転がっていた。
ところで、今朝の新聞には「注意欠陥多動性障害」という病気のことが書いてあった。特徴は「忘れ物、無くし物が多い」とあった。もしかして、自覚症状には「一日が短く感じる」というのがあるんじゃないかと、心配になった。

そんな訳でこちらは枯葉。

調査先の駐車場に落ちていた。

ご無沙汰かも知れない

west2692011-11-19

今日も16日の続き。この錆びたオカマは2年前、主屋と土蔵を解体した際に運び出して、ここに置いたきりにしてある。初めから錆びていたのか、2年前より錆が進行したのか思い出せないが、なかなかいい錆び具合なので久しぶりに登場。

さて、今回は建物の調査ばかりじゃなくて敷地内も調べた。地面には木が立っていて、草が生えていて、石が転がっている。
建物と違ってこれといった特徴が見当たらないものばかり。写真に撮って、後で見返してみても草やがれきばっかり写っている。場所は何処なのか、何を取ろうとしたのかも思い出せない。これはイカンと、カメラの代わりにスケッチブックを持ち出した。下手な絵ではあるけれど記憶は残るしポイントも掴める。3日間うろつきながら、印象に残る場所と、問題点をメモした。
腕が疲れたけれど、パソコンに向かって、写真を広げて、唸っているよりは健康的だったような気なする。

そんな訳でこちらはススキ。

気が付けば11月も3分の2が過ぎ、空は青いし、日差しは明るいけれど、夜間はぐっと冷え込んでくる。例年より早い気がするけれど我が家のストーブも活動を始めた。

葺き土の厚さ

west2692011-11-16

今日も昨日に引き続き現地調査。写真は蔵の鉢巻と呼ぶ部分。3年前に実測した際には、瓦の下にまだ壁が残っていた。木造建築は屋根が抜けると傷みが急速に進む。軒裏が剥がれ、鉢巻も剥落してしまった。軒先瓦もずり落ちて、ご覧の通り。雨除けのシートも被せたけど、一年ほどで風化してボロボロになってしまった。
しかし、一つだけ良いことがあった。前回、壁に覆われて調査不能だったところの構造がすっかり見えている。瓦の葺き土の厚さも解った。屋根を踏み抜かないように登って行って測ったら、10センチあった。
そんな訳でこちらは石で出来た桝の壁面。

屋敷内を走る水路の脇に深さ2メートルほどの桝がある。以前はここに川の水を引きこんで利用していたが、今は使う人もなく、乾井戸状態。珍しくもない風景だ。狭い穴の中なので、日陰状態だが、一日の内で陽が差しこむ一瞬がある。わずかな日差しを浴びて草が育っていた。なかなか頑張っているのだ。

抜き差しならぬ

west2692011-11-15

今日の一枚はご存じ「二宮金次郎」。修理のために実測に出かけた屋敷の庭にあった。崩れかかった土蔵の前の藪の中でも、ひたむきに勉学に励んでいる。
先週末に突然、原稿依頼を受けた。締め切りは月曜日。書き直しをしている原稿だって仕上がらないのに、引き受けてしまった。1000文字ならすぐに終わるだろうと簡単に考えたのだ。これがいけなかった。なかなか難しい。簡単に書くには長すぎるし、いろいろ盛り込むには短すぎる。一日かけてまとめた文章がどうにも気にいらない。夕食後読み返して、結局全部書き直した。

そんな訳でこちらはワイヤー。

どこを通っているのかと調べると二股の木を貫通していた。木の左手に見えるのが土塀。かつては赤い鉄骨が土塀を支えていたらしい。原因は判らないけれど、向こう側に傾いてしまったので、ワイヤーで引っ張ることにしたのだろう。その後数十年経って、ワイヤーの近くにはえていた樹木が育ってワイヤーを包み込んでしまった。無理やり引き抜けば木が傷む。ワイヤーを切ったら木の中に残る。手術で取り忘れたメスみたいなものだ。木を切る訳にもいかない。抜き差しならぬ状況なのだ。

冬のトマト

west2692011-11-12

今日の一枚はトマト。夏野菜のイメージがあるけれど、5月に我が家の庭に植えたトマトは寒くなった今でも少しずつ実をつける。なんでも生まれ故郷は標高2500メートルのアンデスの高地だというから、そこに比べればずっと穏やかな気候なのだろう。まだまだいけるのかもしれない。
地面に落ちたゴーヤの種からも芽を出して、蔦を伸ばしつつある。ずいぶん楽天的な奴なのだ。
これからもっと寒くなることを知らないのだろうかと心配になる。
こちらはハルダム邸を西側から見た外観。
久しぶりに訊ねると西隣の屋敷が土蔵を一棟だけ残して消えていた。30メートル四方位の更地になっていて、地縄が張ってある。「随分端に寄せて建てるんだなあ」と思ったら、敷地を分割して、これから4軒の家が建つのだそうだ。
せっかく広くなって、サッパリしたのにそれもつかの間、以前よりずっと建て込んだ風景になるのだ。残念だが仕方ない。二度と取れない光景を記念に撮っておいた。

浦木戸の家

west2692011-11-11

こちらの写真は浦木戸の家。上野原から旧甲州街道を大月方面に向かって走ると、緩勾配で軒を大きく張り出した切り妻屋根の民家を見かける。四方津駅周辺のちょっと高台になった所にも、とても良い佇まいの家が一軒あった。再生相談の電話で場所を聞いて、思い浮かべたのはその家だった。
昨年3月から設計を始めて、年末に着工。最初にエコポイント制度で断熱材が不足した。そこを何とか乗り切ると、今度は東日本大震災では建材が無くなったり、脆くなった土壁が割れたりと、いろんなことがあったけど、7月に無事完成。この度2011年度の山梨県建築文化賞の「良好なまちなみ景観を形成している建築物等の部門」で奨励賞を貰いました。昨年の「韮崎の家」に引き続き再生民家による2度目の受賞となりました。