ひかりつけ

west2692009-09-02

今日の一枚はコンパス。この単純な道具で何をするのかというと「ひかりつけ」という作業を行う。
「ひかりつけ」とは、乱暴に言えば、2つの部材の形をピッタリとくっつける作業のことを指すらしい。「らしい」というのは確信がないからだ。現場で何度となく耳にして、多分そんな意味だろうと理解している言葉なのだ。おそらくあっているだろう。
さて、材料同士をくっつける時に、お互いの面が常に真っ直ぐとは限らない。それぞれ曲っていることもあれば傾いていることもある。
古い建物の基礎は石で出来ている。基礎石の表面はデコボコしている。木造建築はこの基礎の上に土台を乗せなければならない。土台は柱を立てる際の定規の役目をするから、水平に据えなければならない。そんな訳でデコボコのある上に水平な面を作るためには、土台の下面を石に合わせてボコデコさせなければならない。これは難しい。
この石のデコボコに合わせて木をボコデコに削る作業も「ひかりつけ」呼んでいる。時として「石口を取る」ともいうようだが、こっちは自然石の上に柱を立てる際の「ひかりつけ」をそのように呼ぶようだ。正確に知っている人がいたら教えて欲しい。
で、このコンパスの使い方だが、先ず基礎の上に土台を水平に仮置きする。次にコンパスを広げる。針の先端を石にあて、鉛筆は土台の側面に当てる。そんでもって、広げた角度を固定したまま、針の先で石のデコボコ面をなぞると、土台の側面に石のデコボコが転写される。
コンパスの針の先端が曲っているのがミソなのだ。壊れているのではない。あえて曲げているのだという。真っ直ぐだと正確にはいかないのだそうだ。
この小学生の文房具みたいな道具で、すべての土台の「ひかりつけ」を行う。下の写真はそうやって、基礎の形が土台に転写されたところ。

準備が出来たら直ぐに、土台底面の加工を始める。「ちょっとまて」と悩んだり、「間違っているかも」なんて逡巡はしない。プロの作業は確実さとスピードも命なのだ。確信を持って、迷わず削ってゆく。