宮光園

戸袋の復元

宮光園の北側の縁側にはかつて雨戸が存在した痕跡がある。戸袋を復元しなければならないが、復元のための根拠が無い。かつての戸袋の部品とか、写真が残っていれば良いのだが何も無い。こういうときは同時代の類似した建物を参考にして復元する。 そんな訳で…

出納帳と貨幣

今日の一枚は「出納帳」。もしかすると「普請帳」と呼ばれるものかも知れない。各項には職人の名前が書いてあって、支払い金額や項目、日付が細かく記してある。建物の中から出てきた大工道具に記された名前と同一の人物に対する支払い記録も載っていた。 宮…

ビワの実

宮光園の敷地内には公図にも記されているが、草と土に埋もれた細々とした溝が残っていた。草を刈って泥を取り除いたら、巾1メートルくらいの石積み護岸の立派な水路が出てきた。するとチョロチョロと申し訳程度に流れていた水もサラサラ流れるようになり、集…

一口に「和瓦」と言っても・・・。

今日の写真は軒先瓦。増穂町の昌福寺の大玄関や渡り廊下などの建物にこうした軽やかな意匠の瓦を使用してあった。珍しい形の瓦だが、名前が判らない。特注なのかな? 野郎瓦というものも最近知ったばかりだ。良い機会なのでインターネットで調べてみた。 例…

昭和初期の1.0Mpa(メガパスカル)

昼休み家に帰ると葉っぱの上にこんな小さなカエルがいた。我が家の東側約20メートルまで道路が迫ってきている。家の西側にある材木置き場にも新しく家が建った。家の前にたった2枚残された水田も何時まであるのか判らない。そんな世間の動向をよそに、こうし…

湛水検査

今日の一枚は水槽に水を張った所。 宮光園に残っている建物の一つは明治20年代に撮影した写真に写っている。 その建物の床下から石積の水槽らしきものが出てきた。水槽らしきものには穴が2箇所開いている。その2つの穴からじわじわと水が流れ込んでくるが、…

小舞竹のスクリーン

今日の一枚は宮光園。荒壁をつけているところ。 ここのところ時間が経つのがとても早い。前回現場に行ってから、あっという間に10日も経ってしまった。小舞竹のスクリーン越しに見えていた外の景色はもう見られなくなっていた。 夏の左官工事は冬と違って凍…

裏技

右の写真は内緒の金物。 鴨居と桁の間には土壁が出来る。土の重さで鴨居が下がらないように、こうやって密かに補強の金物で吊っておく。 今日は久しぶりに宮光園の現場。非難口誘導灯や自動火災報知機や非常照明の取り付け場所やら方法について打ち合わせ。 …

勤労な1日

今日の1枚は「小舞竹」。宮光園では下屋部分の左官工事が始まり、今日は小舞竹を組んでいた。文化財建造物専門のH先生の話では、こんな風に肉の薄い竹は若い竹なんだそうだ。 人間と同じでまだ贅肉がついていない訳だ。 今日は忙しい一日だった。12:30に歯…

もうぐちゃぐちゃ

今日の一枚は宮光園の「縁側の柱」。基礎石の頭を揃えて、建物の傾きを直して、床を平らにしたら、柱が短い。どうやら根元が腐食して無くなっていたらしい。こんな風に短く根継ぎしてあった。 寒い日が続いているが、気が付くと、既に5月だ。世の中はゴール…

接ぎ接ぎ(ツギハギ)。

今日は東京に出張した。新宿駅で降りると携帯電話にメールの着信があった。急ぎの用件。 乗り換えの電車が来る直前に事務所に電話をすると、同時に構内放送が騒ぎ出した。何時か雪で足止めを食らった時は肝心なことは何も教えてくれなかったが、今日は饒舌だ…

羽重ね張り

今日の一枚は野地板。これは宮光園の北側下屋にある瓦屋根の下地。「羽重ね張り」と大工は呼んでいた。 我々の事務所で縁があるのは素朴な民家の簡単な屋根が多い。通常は板を無造作に並べているだけで、こんな仕事に出会うのは珍しい。なかなかきれいな張り…

著者の近影

今日の一枚は「金輪継ぎ」。「金輪継ぎ」というのは木材同士を繋ぐ場所の加工形状(専門用語で継ぎ手と言います)の名称を差す。 一般的に木材を繋ぐと強度が落ちるが、この建築は文化財なので古い材料は可能な限り再使用する。そんな訳で、ここでは柱の根元…

エイプリルフールに答えをだすこと

今日の一枚はステンドグラス。昨夜のキャビネットにはこんな扉が付いている。 文章を書いて、写真貼り付けて、アップロードしたところで昨夜は力尽きた。そんな訳で一体何を書いたのか全く思い出せない。われながら、まことにいい加減な話ではある。同じこと…

レプリカナモン(金物)

今日の一枚は「梅木」じゃない「埋め木」。キーボードで「UMEKI」と入力すると「梅木」と変換されるので大変書きにくい。「UMEGI」と入力すると、最初は「埋め儀」などと、とぼけた返事をしていたが、学習機能があるので2度目からは「埋め木」と表…

ツギハギ

2週間ぶりに宮光園の現場に行った。2階建ての部分が概ね出来たので、下屋の平屋部分の柱を建て始めている。一旦取り払った足場を再び掛けなおして、青いシートに覆われていた。 今日の一枚は「柱の先端」。ごらんのようにツギハギだらけ。この栗材の柱は釜…

ジンチョウゲの文字はどう書く

今日の一枚は「沈丁花」。さて、どんな文字だったろうかと思い、「ジンチョウゲ」と入力してみたら、こんな漢字に変換された。パソコンに頼り過ぎるとこんな風に漢字を忘れてしまうのだ。 昨日は1日写真のデーター整理をして過ごしたが、デジカメを使うよう…

門柱の捜索

今日の一枚は「門柱」の一部。宮光園の工事も後半戦に入ってきた。今日は下屋部分の石が並べてあった。右の写真の2列並んだ右側の石が礎石。左側が四判石。石の欠けた場所には雨戸の戸袋が来る。戸袋の石は庭の草叢に転がっている。古い写真に写っているもの…

「たこ」の労働の日々

2月が終わったと思ったら、3月も4日経ってしまった。今日の一枚は土壁の中塗り作業。 「俺の顔に泥を塗った」というのは恥をかかせたという意味だが、壁に土を塗るのは体裁を整えることになる。なかなか難しいものだ。 写真の現場は宮光園。この壁を塗り終…

マッカーサー遺文

今日の一枚は「書院の障子」。これは部分の拡大。薄汚れた障子紙だがよく見ると松の模様が透けて見える。このほか竹と梅の模様もあった。 「書院」というのは、座敷にある床の間の脇に設けた出窓みたいな場所を指す。古い写真を見ると確かに写っているが、現…

幻のボルドー神社を訊ねて

今日の一枚はボルドー神社。以前、建築史家のK先生が「宮光園にはボルドー神社があるでしょ」と話していた。耳にしたことはあるが、目にしたことは無い。敷地北側の草叢に鳥居があるから「あの辺だろう」と思い込んでいた。さて、今回の保存問題の大会で宮…

パテ

今日の一枚はパテ。ホットケーキの元ではない。これは食べられません。 文化財の修理なのだから創建時と同じ技術であるパテを使って硝子を押さえる設計を考えた。埼玉からやってきた建具屋は「それは耐久性が悪い。メンチナンスも難しい。木材で押し縁を作っ…

姿の無い魔物

今日の一枚は宮光園の現場。屋根の工事が終わって覆屋と足場を取った所。今週の土曜日に大勢見学に来る予定だが、窓もなければ、周辺に取り付く予定の1階の屋根も壁もない。丸裸な雰囲気だ。なんだか一番冴えない状態で出迎えることになる。空が暗いせいか「…

エコロジカルな建築

右の写真は基礎と土台。基礎に玉石を並べて土台に木を敷いたところ。この上に柱を建てて建築が出来てゆく。遠い将来、上の建物を取り除いて、石を動かしたら後には何も残らない。 我が家も42年前に今の場所に移築された。解体して建物を取り除いた後には柱の…

モンドリアン(ぽい)窓

今日の一枚は宮光園の屋根。屋根の葺き替えと外壁の修理が終わったので、今週末で上屋を撤去する。屋根瓦を間近で見るのはこれが最後になる。天辺に見える銅線は避雷針。 さて、昨夜は夕食後にワインを飲んでからパソコンに向かった。 ワインは近所のいちや…

羽振り

今日の一枚は「螺旋締り」。宮光園の2階にある引き違い建具の戸締りに使っていた金物達。 我が家の北の窓からは近所の桐の木が見える。白いちいさな実を沢山つけていたが、ここ暫くの間、鳥達が朝食に集まっていた。とうとう食べ尽くしてしまったようだ。丸…

永遠平和のために

右の写真は修理を終えた宮光園の棟瓦。ちょっと扁平な「輪違い」。 今日は昨日の続きを書く。 外に出ないといえば、哲学者のカントも生まれた町であるケーニヒスベルクを生涯ほとんど離れたことはなかった。だから外国旅行にだって行ってない。閉じ籠もりと…

先祖がえりの柱

今日の一枚は「祝学校の柱」。祝学校とは明治初めに山梨県で盛んに建てられた擬洋風学校建築の一つ。 この柱は学校の入り口付近のバルコニーを支えていた。学校が解体される際に、何故か縁あってお隣の宮光園に引き取られ、東屋の柱に使われていた。 柱の表…

蟻の頭

今日の一枚は梁の端部を修理した所。黒い部分が古材で白い所が新しい木材。虫害や雨漏りにより傷んだ部分を取り除き、同じ種類の木で修理する。これを接(ハギ)木などと呼ぶ。写真が小さいから判り難いけど、良く見ると木目まで揃えてあるのだ。 この場合、…

お面丸瓦

今日の一枚は瓦屋根の下り棟にも使う丸瓦。古くはお面にも使われていたという。(本当?) この顔はどうしたのかと聞くと、目玉の所から銅線を出して眉のところに引っ掛けて固定するのだという答えが返ってきた。何となく想像は付くが、どんな風に留めるのか…